神様修行はじめます! 其の三

ガタガタガタ!っと牛車全体が激しく揺れた。


うわ! うわわ! こ、転ぶ~!


床に尻餅をついた拍子に意識の集中が途切れてしまった。


うぅ・・・ダメだ、持続できなかった! もう一度・・・!


ンモオォ――ウ!

牛の悲鳴のような鳴き声が聞こえた。


どした!? 牛!?


見ると巨大顔面たちが、こぞって牛達に襲い掛かっている。


攻撃されて怒った牛達は、メキメキとその体躯を戦闘仕様に変化させ迎え撃った。


血のような真っ赤な目。隆々とした二本の角が勇ましい。


盛り上がった全身の筋肉は舌の攻撃を受けても鋼のようにビクともしない。


・・・よっしゃあ! 偉いよ! 牛!


さすが権田原の牛はタダの牛じゃない!


個人的には米沢牛より松坂牛より価値があると思ってるよ! あたしは!


よし! 今のうちに精神集中・・・


― ビュルッ! ―


巨大顔面の舌が鞭のように長く伸び、牛達の首に巻きついた。


ンモウ! ンモオォ――ウゥ!!

ギリギリとノドを締め上げられ、牛達は苦しげに必死に暴れだす。


うわわ! また揺れるー! うわっ!


「異形のモノ達が集まってきましたわ!」


空を見上げると、四方八方から巨大顔面がウヨウヨ現れてきた。


ヤバイ! このまま立ち止まっていると集中攻撃を食らう!


しま子が素早く飛び出し、牛達を助けに行く。


「しま子! ケガが・・・!」


自分の腕のケガを物ともせずに鋭い爪で襲い掛かる。


動くたびに腕から血が溢れ、白い雪の上に鮮血が飛び散る。


異形のモノから溢れる緑色の体液に、しま子の赤い血が混じった。


セバスチャンさんが髪を結わえている紐をシュルッと外した。


細長い針が銀色に光る。それを手にして、彼は飛び出した。


そしてしま子の加勢をして、針一本で立ち向かう。


銀の光はセバスチャンさんの手元で上下左右、踊るように的確に光り輝きながら敵を切り裂く。


黒髪と黒い衣装が華麗に舞う。