神様修行はじめます! 其の三

「し、しま子! 出しなさい! べーって!」


そんなモン食べたらお腹壊しちゃうでしょー!?


あたしは慌ててしま子の背中をバンバン叩いた。


しま子と絹糸の口の中から、世にも悲惨な悲鳴が微かに聞こえてくる。


他の術師達も顔を真っ青にして慄き始めた。


「う、うわあぁ!?」

「食った! こいつら食いやがった!」

「ひぃぃぃー!?」


絹糸が口の中に頭を咥えたまま、黄金の目でジロリと睨む。


門川君が冷たい声と表情で話し続けた。


「言わない者に用は無い。ここで彼等の食料になってもらおうか」


「ほ、本気ではあるまい! 我等に脅しなど通用しないぞ!」


「そうだ! 端境一族を舐めるな!」


「ちょっとあんた達! これは脅しなんかじゃないんだってば!」


あたしはしま子の背中を乱打しながら必死で叫んだ。


あんた達って門川君のこと良く知らないでしょ!?


彼の言動にはね、裏も表も加減も冗談も存在しないのよ!


自分の口から出た事には全責任を持つ人なの!


バカ正直なくらいそのまま一直線に実行しちゃう人なんだから!


なるよ!? なっちゃうよ!? 食料に!


舐める程度じゃ済まないよ! 咀嚼されるって絶対!


「頼むから今すぐ洗いざらいしゃべって! しま子にこんな栄養素摂取なんかさせたくないー!!」


「ぐぅ・・・」


あたしの切羽詰った訴えに、やっと本気で身の危険を感じたらしい術師が呻いた。


「よかろう。どうせ話したところで今さら間に合わぬしな」


そしてニヤリと不敵に笑い、訥々としゃべり始めた。


「座り女の結界を解いた世界は地獄に落ちる」


「それは知ってる! それで!? 早くしゃべって!」


「世界を救うには、再び結界を張り直さねばならぬ。端境ならそれができる」


「だから!?」


「だがそれには条件がある。門川の一族全員に消えてもらうのだ」


・・・・・

え?


「端境が作った結界の中に、門川の一族全員がひとり残らず、永遠に封印される事が条件だ」