神様修行はじめます! 其の三

その目前にふたつの影。

門川君と凍雨君が肩を並べて走っていた。


氷の上でも全く躊躇無く、陸上と何ら変わりない脚捌きだ。


危なげの無い足取りで一直線に池の岸に向かって疾走している。


あたしには、まともに立つ事さえできなかったのに!


さすがは氷血の力! 氷はふたりの味方なんだ!


ドンドンと連発する頭上の爆発。


熱と風圧がここまで届いてくる。


顔を歪めて耐えつつ、あたしは岸の方面に目を凝らした。


・・・・・いた!!


平安朝の衣装に身を包んだ人物が、複数。


あれは端境一族の術師だ。


岸辺に立って印を組み、宙を駆け巡る絹糸に向かって懸命に結界術を発動している。


そのうちの一人があたし達の存在に気が付いた。


こっちに体を向け、術を発動しようと身構える。


しま子に肩車をしているセバスチャンさんが右手の指をシュッと掲げた。


呼応するように、術師の足元から植物のツタが土を破って飛び出す。


術師はその全身をあっという間に絡め取られてしまった。


他の術師達も次々とツタに絡まれ、餌食になる。


やった! これでもう術は発動できない! さすがセバスチャンさ・・・!


― ブチブチッ! ―


あたしは目を見張った。


端境の術師達が・・・体に絡まるツタを両手で難なく剥ぎ取っていく!?


セバスチャンさんのツタは、人間が剥がそうと思ったって簡単に剥がせる様なモノじゃないのに!?


「・・・チッ。やはりこの時期は分が悪りぃな」


セバスチャンさんが舌打ちしながら呟いた。


やっぱり冬の時期は権田原一族の力は平常よりも衰えてしまうんだ!