『彩、容、命。その全てが無たるものこそ、我が望みに結実せし定めなり』
冷静な、淡々とした声が聞こえた。
門川君の全身から白い輝きが放たれ、同時に周りの空気がキンッと冷え込む。
― シュウゥゥッ ―
身を縮こませるほどの冷気が走り、庭を覆い尽くすほどの池の水全部が一瞬で凍りついた。
水竜巻も下方から天に向かってみるみると凍りつく。
轟音も突進もピタリと止まり、竜巻形の白い巨大オブジェが瞬く間に完成した。
おわあぁぁ~・・・お見事!
氷の竜巻オブジェを遥か見上げながら、思わずパチパチ拍手してしまった。
いや、こんなん滅多に見られるモンじゃないわ。 ホントすごい~。
芸術作品って言っても過言じゃないわ。 絶景かな!
「天内君! 油断するな! 次が・・・!」
門川君の言葉も終わらないうちに次の攻撃が襲ってきた。
小型の結界術が矢継ぎ早に飛び掛ってくる。
落下すると次々に爆弾のように爆発して、あたし達の足元の渡り廊下を破壊していった。
うわ!? このままじゃ廊下が! 足場が!
炎と煙と爆発音に包まれ、廊下の前方の部分が焼けて崩れ落ちた。
支えの無くなった足場がグラァリと大きく揺れる。
あ~! あ、揺れ・・・落ち、る!
「飛び降りろ! 巻き込まれるぞ!」
門川君の叫び声と同時に、あたし達はそれぞれ咄嗟に思い切り飛び降りる。
そして氷の池に転落した。
冷たく固い氷の上にドサリと落ちて、したたかに背中を打つ。
いてて! 受け身、とりそこなった!
仰向けに倒れるあたしの目に、雨のように降り注いでくる結界術が見えた。
あれ・・・ひょっとして全部爆発物が封印されてるの!?
ノドを鳴らして息を呑み、夢中で立ち上が・・・
ろうとして、思いっきり滑ってコケた。
ズデン!とうつ伏せに倒れ、そのまま立ち上がろうとして、また足が滑って同じ体勢でコケる。
つるっつる! スケートリンク状態!
立・・・立つ事ができない!
あたしって実はスケート初心者なのよ!


