神様修行はじめます! 其の三

えっとぉ・・・え? 別、行動?


さっきまで「あたしひとりでも権田原に」とか自分でも考えてたけど。


いざそう言われちゃうと途端に戸惑ってしまう。


あたし別行動? 門川君と離れて?


「そうじゃな。我は永久と共に門川へ行かねばならぬ。自由に動けるのは小娘としま子じゃ」


「え? あ・・・う・・・」


「岩たちと共に行くのじゃ。頼んだぞ」


絹糸にもそう言われてあたしは空気の塊りを飲み込んだ。


あたしの胸をよぎる、この複雑な気持ちは・・・


心細さ。門川君と絹糸と離れて戦う不安感だ。


今までどんな戦いでも、常にどちらかが付いていてくれたから。


微妙な心境を敏感に感じ取ったのか、絹糸があたしに話しかける。


「小娘、お前はもう立派な神の末裔。戦力のひとつとして働いてもらわねばならぬ」


「・・・・・」


「この状況じゃ。お前の滅火の力、あてにしておるぞ」


その絹糸の言葉に、あたしの全身にヒタヒタと薄い緊張感と使命感が満ちてくる。


そうだ。あたしは神の一族の末裔。


異形のモノから世界を守るのが使命なんだ。


行かなきゃならない。権田原の・・・門川君のために。


「分かった。まかせて」


しっかりと頷くあたしの横で、凍雨君が大きな声を上げる。


「ぼ、ぼくも一緒に権田原へ行きます!」


え? 凍雨君も一緒に?


門川君が心配そうな顔をする。


「しかし凍雨君、君は氷血の一族の当主だ。君も戻らなければならないだろう」


「いいえ永久様! 氷血は長い間過酷な状況を生き抜いてきました! 非常事態には慣れっこなんです!」


「しかし・・・」


「永久様の手足となって働く旨は、一族に伝えてあります。大丈夫ですから!」


真摯な瞳で門川君を見上げている。


力強いその宣言を聞いて、門川君は一瞬躊躇したけれど、すぐに決断した。


「・・・分かった。頼む凍雨君」


「はい! 任せて下さい!!」


凍雨君の表情が安心したように明るくなった。