神様修行はじめます! 其の三

彼を背中に乗せた絹糸が戻ってきた。

みんな大急ぎで駆け寄る。


「凍雨君! 大丈夫!? どうしたの!?」


「び、びっくりした! まさか転移した途端に落っこちるなんて、こんなの詐欺だよ!」


口をパクパクさせながら青い顔で凍雨君が喘いでいる。


「びっくりしたのはこっちじゃ! 小僧、お前あの宝珠がどれほど貴重なものか知っておるのか!?」


噛み付くような絹糸の形相に凍雨君が縮こまる。


「ご、ごめんなさい! でも非常事態が起きたんです!」


非常事態!?

皆が一様にギクリとして凍雨君を見た。


「権田原一族の里の結界が破られたんです! 異形のモノの襲撃を受けています!」


そんな・・・!! 遅かった!?


お岩さんが両手で顔を覆い、ヒィィとか細い悲鳴を上げた。


そしてセバスチャンさんに血相変えて縋り付く。


「ああぁ、どうしよう遥峰(はるみね)! みんなが殺されちゃうよ!」


「落ち着け、岩!」


セバスチャンさんが片腕でお岩さんを力強く抱き寄せる。


お岩さんは目に涙を浮かべてその胸にしがみ付いた。


絹糸が唸り声を上げる。


「ううぬ、弱い所を一番に突いてきたか。知恵のあるモノがおるようじゃの」


「状況が変わったな。もはや一刻の猶予もない。だから天内君」


「はい!?」


門川君に突然名前を呼ばれて、あたしは思わず背筋をピンと伸ばす。


は、はい、なに!? だからって、何がだから!?


「君、今から僕とは別行動だ。しま子と一緒に権田原へ行ってくれ」


「・・・・・へ?」


「門川からの応援部隊が駆けつけるまで、加勢するんだ。持ちこたえさせてくれ」


「・・・・・」


あたしはキョトンとしてしまった。