・・・・・
あたしは唇を固く結び、無言で頷いた。
うん、そうだよね。門川君だって本心では権田原に行きたいはず。
あたしだけでも行きたいとこだけど、あたしには彼の護衛役としての務めが・・・
― キイィィ・・・ン ―
突然、鼓膜を外に引っ張り上げられるような嫌な音が響いた。
思わず顔を顰めて両耳を手の平で塞ぐ。
すると遥か頭上の空間に、大きな墨絵のようなものが浮かび上がった。
絵? いや、文字? 図面・・・じゃないよね? なにあれ?
透明な筆がサラサラと書き流すかのように、次々と複雑な図が頭上高くに浮かび上がる。
門川君が驚いたような声を上げた。
「絹糸、あれは・・・まさか!?」
「うむ! 転移の宝珠じゃ! どこの誰があんな貴重な宝珠を使って・・・!」
― パ―――ンッ!! ―
みなまで言い終わらないうちに、複雑な図が光と音と煙と共に一斉に弾け散った。
おわ!? 花火か!? たまや!?
口を開いて唖然としていると、図が消えた場所に何かがまた突然現れた。
今度はなによ? あれは・・・・・
・・・・・人間!?
なに!? 花火じゃなくて手品だったのこれ!?
てか、あの人間って良く見たら・・・
「・・・凍雨君――っ!!?」
「うわあああぁぁぁっ!!」
空間に現れた人間が凍雨君だと認識した瞬間、悲鳴と共に彼の体が落下した!
きゃああ! 落ちる! 落ち・・・!
ブワッと気が巻き上がって絹糸が変化すると同時に飛び出した。
落ちてきた彼の体を背中でナイスキャッチ。
でかした絹糸ー!


