神様修行はじめます! 其の三

「神の一族達も千年前とは変わった。今なら不測の事態にも対応できる」


絹糸があたしの心を見透かしたかのように、そんな事を言った。


「じゃが非常事態である事に変わりない。特に権田原は他の一族に比べて戦闘面に関しては、弱い」


「その通りですわ! 一刻も早く戻らなくては!」


お岩さんが顔色を変えて、それでも凛とした態度で宣言した。


「セバスチャン! 戻りますわよ!」


「はい、ジュエル様」


「ちょ、ちょっとちょっと! そういう事ならあたし達も一緒に行こうよ!」


あれだけお世話になった権田原の人達を無視なんてできないよ!


みんなで守ろう! ねぇ門川君、絹糸、そうしよう!


「天内のお嬢様、それはなりません」


セバスチャンさんが静かに首を横に振る。


「ど、どうして!? あたし達は仲間じゃん!」


「それは無論でございます。ですが永久様は門川の当主にあらせられます」


「非常事態に総大将が、あちこちウロチョロするなんて聞いたこともありませんわ」


お岩さんも当然の顔をしてそんな事を言ってるけど・・・。


でも大丈夫なの!?


権田原は土の力を行使する一族で、今は冬。


休息の時期に入っているんでしょ!?


一緒に戦ってくれる動物達だって冬眠してるのも多いだろうし!


全体の力が低下している今、大量の異形のモノに襲い掛かられたら・・・!


「岩さん、僕が戻ったらすぐに門川から部隊を派遣しよう」


「お願いしますわ。永久様」


「セバスチャン、派遣した部隊の全権を君に委ねる。好きなように配置してくれ」


「承知いたしました」


揃って頷き合う三人を見ながら、あたしの胸と胃はキリキリと痛んだ。


やっぱり権田原には行けないの?


大切な仲間の一大事な時なのに、一緒に戦えないなんて!


「小娘、押さえよ。当主が本陣で指揮をとらねばどうにもならぬ」


「それは、分かる、けど」


「永久とてお前と気持ちは同じじゃ。汲んでやれ」