神様修行はじめます! 其の三

聞きたくないけど・・・聞かなきゃならない。


知らなきゃならないんだ。あたし達は。


「絹糸、噂話って?」


「・・・・・」


「絹糸」


「・・・・・子、がの・・・」


「え?」


「・・・子が、いたそうなのじゃ。雛型の腹の中に。雛形も夫も気付いておらぬようじゃったが・・・」


・・・・・。

子ども? 赤ちゃん?


雛型のお腹の中に赤ちゃんが?


「思えば、体調を崩していたのはそのせいだったのであろう」


「あ・・・じゃあ、その赤ちゃんは?」


「・・・・・」


「雛形は術を施されちゃったんだよね? 赤ちゃんは? 大丈夫なの?」


「・・・・・」


絹糸の沈黙が、怖かった。


ものすごくものすごく怖かった。


耳を両手で塞ぎたい。


聞きたくない、続き、聞きたくない。


聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。聞きた・・・


「施術に邪魔だと・・・腹から掻き出されて・・・雛型の術の触媒に使用された」


「・・・・・・・」


「母である雛型が気付かぬ間にの。雛形は我が子に会うこともできなかった」


お岩さんが両目をギュッと瞑り、顔をそむけて細く息を吐く。


セバスチャンさんが言いようの無い表情で天を向いた。


あたしは、両の拳をギリリと握り締めながら思い出していた。


さっきの雛形の表情を。


その頬を滝のように流れていた涙を。


絶望を舐め尽したような、あの目を。