神様修行はじめます! 其の三

「糾弾、というものはのぉ、心を麻薬のように高揚させて麻痺させるのじゃ」


他者の罪を糾弾する者は・・・自分こそを正義と信じておる。


絶対的な罪や悪に対し、それを責め立てる事に対して誰が躊躇などするものか。


ましてや自分達は被害者。


加害者を責める事ができる正当なる権利者じゃ。


しかし、こういった傷はいくら相手を責めたところで癒されぬ。


当然じゃ。責めても失ったものは還って来ぬのだから。


そこには癒しも、許しも、何も無い。


責める行為によってただ憎悪と興奮だけがどんどん増幅する。


「じゃから・・・歯止めが利かなくなった」


雛型の家族への集中砲火は日を追って激しくなる。


毎日、屋敷に大勢の人間が罵倒しながら押しかけて来る。


扉をしっかりと閉じて自衛したが、人々の罵りの声が一日中止む事は無かった。


屋敷の中に汚物が投げ込まれ、悪臭が漂う。


扉は今にも破壊されそうに乱打され、恐ろしい言葉が終日繰り返され。


一歩も外には出られず、食料も底を付く。


日の光さえ拝めぬ暗闇の部屋で、肩寄せあって怯える日々。


そしてついに屋敷の壁が破壊され、悪鬼のような表情の人々が中に乗り込んできた。


父親が、妻や娘を守ろうとして押し問答になった。


『やめてくれ! 妻や娘にはなんの罪も無い!』


『罪が無いだと!? よくもそんな事を大きな顔で言えるものだ!』


『そうだ! やはりこの親のせいであんな大罪人が生まれたんだ!』


『責めは全て私が受ける! だからどうか妻や娘に酷い仕打ちはしないでくれ!』


『酷い仕打ち!?』


『俺の妻は、酷い仕打ちどころか異形のモノに喰われたんだぞ!』


『私の娘も殺されたわ! この家の大罪人のせいで!』


『なのに、お前等はのうのうと生きているなんて!』


『許せない! 許せない! 許せない!!!』


憎しみが興奮を呼び、興奮が暴力を生んだ。


父親は・・・一切の抵抗をしなかった。できなかった。


殴られ続け、蹴られ続け、延々と責め苦を一身に受けてるだけ受けて・・・


命を、落とした。