神様修行はじめます! 其の三

雛型は次々と分身を生み出し、それは世界のいたる所に座する事となる。


それはつまり・・・


大罪人の姿が、常にずっと人々の目にさらされ続ける、という事じゃ。


自分達の愛する者を自分勝手に奪い去った、憎しみの対象が。


それで平穏な心など迎えられようはずもない。


端境一族への恨み憎しみは日を追って増すばかり。


それこそが門川の狙いじゃった。


罪が赦されてしまえば端境一族が門川に従う理由は無くなる。


門川は端境を自由放免にするつもりなど無かった。


全滅覚悟でやっと玉座から追い落とした相手。


その相手を、みすみす見逃すものか。


常に監視の行き届く場所で、いつまでも首根っこを押さえつけておきたかった。


だから人々の憎しみが燃え上がるのは好都合じゃった。


端境一族が、雛型の大罪が赦されてしまっては・・・困る。


だから雛型の犯した罪は、生涯、消え去る事は無い。


門川の地位の安定のために・・・。


「門川は、雛型を騙した、の・・・?」


「憎しみという感情は、大きな力を生むのじゃよ」


「力・・・?」


「憎む対象がひとつに絞られた時、人は時に、強固な結束力を生み出す」



あたしは乙女会や上層部の事を思い出した。


普段は、あの連中は常にお互いを出し抜こうとしている。


お世辞にも仲良しこよしとは言えない。


でも、あたしを攻撃する時は、途端に一枚岩のように結束する。


「その感情を門川は利用し、簡単に人心をひとつに纏め上げたのじゃ」


「そんな・・・それじゃ・・・」


「雛型と端境一族は、門川の玉座への生贄にされたのじゃよ」


ひどい・・・!


なにが、なにが「罪の償い」よ!

よくもそんなひどい事を!


本当に門川って先祖代々ろくな事してこなかったのね!