神様修行はじめます! 其の三

当時は今ほど神の一族全体の統制もとれていなかった。


それぞれの一族が個別で必死に戦ったが、なにせ不意打ち。


混乱は混乱を呼び、悲惨を極めた。


しかも敵の数は膨大で、体勢を立て直す間も無く次から次へと増え続ける。


皆、死んでいった。


異形のモノと戦い、殺された者。


逃げる事のかなわなかった女や幼い子ども。


敵の攻撃から逃げおおせても、外は地獄のような猛吹雪。


極限の寒さに飲み込まれバタバタと命を落としていった。


『やめて――! その子を殺さないで!』


『おかーさーん! おとーさーん! いやあぁぁ!』


『ぎゃああぁぁ―――っ!!』


血飛沫、骨の砕ける音。肉を咀嚼する音。


我が子を目の前で引き裂かれ、泣き叫ぶ親の悲鳴。


親を目の前で喰われ、救いを求める幼子の絶叫。


自らの命が尽きる瞬間の断末魔の声。


これぞまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。


瞬く間に世界に死が溢れかえった。


我も我が子を守るために懸命に戦いながらも、もはや観念していた。


この世界は、もう終焉を迎える。人は終わってしまうのだ。


そう確信した。


「それが・・・千年前の大罪・・・」


「うむ。女がひとりの男を選んだ罪で、代わりに世界が地獄と化した」


「それは、それは、でも・・・」


あたしは何も言えずに黙り込む。


とても言葉なんか出てこない。どんな言葉も・・・無意味だ。


愛する夫が目の前で死んでいくのを助けたかった雛型。


ある日突然、理由も分からず皆殺しにされていく世界の人々。


もう、これじゃ本当にどこにも救いようが・・・無い。