神様修行はじめます! 其の三

『あなた! しっかりして! あなた!』


『・・・・・』


『嫌あぁ! お願い死なないで―――!』


凍傷になり色の変わった皮膚が雪に埋もれていく。


夫の意識はとうに失われ、呼吸も止まる寸前だった。


死ぬ。目の前で死んで行く。


自分の愛する夫が、自分のせいで死んで行く!


死んでしまう―――!!




「それで・・・どちらを選んだんですの?」


お岩さんが聞いた。


世界と愛する男の両天秤。


千年前に起きた大惨劇。犯した大罪は・・・。



『私の愛するあなた! あなたの命はきっと守ってみせます!』




「女は・・・夫を選んだ」


お岩さんは静かに頷いた。


その気持ちが痛いほど理解できたんだろう。


前回の戦いで、世界よりもセバスチャンさんの命を選ぼうとしたお岩さんには。


あたしにだってすごく良く理解できる。


だって身内や仲間や愛する者が、目の前で死にかけているのを見ながら・・・


「あ、助けたら世界が大変になっちゃう。だからこのまま放っておこうっと」


なんてこと、いったい誰が考える?


助ける力があるなら救いたいと思うのが人情だよ。


人間として当然の感情じゃん。責められるようなもんじゃないよ。


「確かにのぅ、人として無理からぬ感情じゃ。だがその結果・・・大惨劇が起きた」