神様修行はじめます! 其の三

「ね、ねぇ絹糸、雛型は今なにを見ているの?」

「・・・・・」

「ねぇ絹糸ってば」


あたしだけじゃなく、皆が絹糸の答えを待っていた。


でも絹糸は固く口を閉ざしたまま、何も言わない。


あたしはオロオロと雛型と絹糸を見比べる。


ねぇちょっと、このまま黙って見ていてもいいの?


なんか、絶対、良くない気がするよ。あの雛型の様子は普通じゃないもん。


結界の中に、若い男性の幻が現れた。


「・・・!」


涙で潤んだ雛型の目に衝撃が走る。


「あ・・・あ・・・あ・な・た・・・?」


声にならない声を発しながら幻に擦り寄るかのようにして手を伸ばす。


結界の中で、しばし見つめ合うふたり。


すうぅぅ・・・

ふたりの姿が重なり・・・


雛型の全身が、びくん!と大きく震えた。


今まで以上に色濃い絶望に染まった表情。


悲惨のひと言でしか表現できないような顔から、涙が床に零れ落ちる。


歪んだ頬を次から次へと涙が伝った。


わななく唇から、途切れ途切れの泣き声が漏れる


その姿に影のように寄り添い、白塗りの顔が耳打ちをする。


「雛型よ、悟ったか?」


「うあ・・・あ・・・」


「この悲劇は、全ては門川が原因なのだ」


「ああぁ・・・ああ――・・・」


「門川は最初からお前の罪を許すつもりなど、さらさら無かったのだよ」


赤い唇が蠢く。


「お前は騙され、利用され、一家全員犠牲になったのだ」


「あああぁぁ―――――っ!!!」


絶叫が空間を切り裂いた。