「3,2,1,アクション!」

        ・
        ・
        ・


「県の強化選手に選ばれたそうですが」


三峰が声を変えて訊ねてきた。


「努力が認められるのは嬉しいです」


淡々と答えた。
誰が言ったんだ、これ。




「でも、辞退なさった」



三峰が切り込む。




「この学校でやるバスケが好きで。
 それが僕にとってのバスケです」



冬咲高校入学を決めた時の信念。
【部活を最優先すること】。


他での練習量が増えれば、
当然、高校での部活動はおろそかになる。



それが怖かった。





「なるほど。
 自分のバスケの形を追っていると」



全てを格好良くコトバで飾るのは、
三峰のクセのなのだろうか。





思わず苦笑してしまった。




「格好良く言えばそうなんですけどね。
 部活に手を抜くと、軽蔑されますし」

「軽蔑。誰にでしょうか?」



ものの見事に食らいつかれた。


三峰は、やっぱり勘が鋭い。


原沢。
浮気はすぐバレるぞ。





覚悟を決めて、声にした。




「大切な人にです」