田口先生を監督と呼ぶのは野球部員だけ。
普段、温厚で時に冗談言って笑う、楽しい田口先生しか知らない私。
「野球部で怒られた事ない奴いないんじゃね?まあ、監督のは愛があるから、誰もへこまないけどな」
「怒られて伸びるタイプってやつ?」
「アハハハ。俺は本当はほめてもらった方がいいんだけどなー」
私が言うと、頭をかきながら上原君は笑う。
「まあ、俺、こんなんだけど、主将だから一番怒られるし、そうも言っていられないけどさ」
「えっ?!上原君、主将だったの?!」
「……藤波さん、バドミントン部の部室、野球部のグラウンドに近かったのに、本当に興味なかったんだな。すげーショックだわ」
上原君はショックを受けたような顔で、右手で顔をおおった。



