涌井君の野球を知ったのは、ほんの1ヶ月前。
それなのに、今までありがとうとか、お疲れ様とか……。
冷静になって考えてみたら、何様だよって思う。
「……やっぱり、藤波さんおもしろい」
「ハハハ。今さらわかった?」
涙をぬぐいながら、涌井君は笑った。
ショックはまだ消えないかもしれない。
だけど、いつか立ち直ってくれたらいいなって思う……。
「……コレ、返すよ」
「……うん」
涙が引いた後、涌井君は野球ボールのキーホルダーを私に差し出した。
あげるって言ったんだけどな……。
そう思いながらも、受け取る。
……でもそうだよね。
これから綾美ちゃんに告白するのに、別の女の子からもらった物は、持っていられないよね。



