「思わず笑った。藤波さんって、何でタイミングよく欲しい言葉をかけてくれるんだか……」
そんなの決まっているよ……。
涌井君の事が好きだからだよ。
見ていたらわかるもん。
今、どんな言葉が欲しいのかって……。
「おかげで、緊張は吹っ飛んだ。もちろん、キーホルダーのおかげもあるんだけどな」
「……うん」
「完璧におさえられた……はずだった」
声のトーンが落ちていく。
「……あと1人で準々決勝だったのにな。完璧に投げていたのが全部パアだ。……ちくしょう」
「涌井君……っ!」
彼は、私の目の前で、片手で顔をおおい、涙を流した。
さっき、みんなの前で泣くに泣けなかった、悔し涙……。



