「え?ちょ、な、何で……?」
何でここに来るの……?
ここに来るよりも、綾美ちゃんの所に行くべきなのに!
「試合の後は必ずココに来る。それもオレの日課」
「あ、そ、そうなんだ……?」
恥ずかしいなぁ、もう。
私は慌てて涙をぬぐって、何でもない風に装う。
「……試合、見に来てくれてありがとう」
「ううん……」
「藤波さんの声、しっかり届いたから」
フッと笑う涌井君。
「……あ」
1回裏に私は確かに涌井君に向かって叫んだ。
緊張していると思ったから、とっさに……。
やっぱり、ちゃんと届いていたんだ。
じゃあ、あの時笑ったのも……?



