私は少し悩んだ後、くるみに書類袋を差し出す。
「ごめん、悪いけどお願いしてもいい?」
「うん、わかった。わざわざ頼んで持って来たって事は、きっと野球の資料よね」
「そうだよね……」
重要書類ならこんな所に持たせないだろうし。
部活に使うから、私に持っていくように頼んだのだろう。
「じゃあ、戻るね。汐音、見学しててもいいけど、熱中症に気を付けてよ?」
「うん。ありがと……」
書類袋をかかえて、くるみはベンチへと戻っていく。
何気なく、くるみを見ていると、すぐに田口先生に書類袋を手渡してくれた。
「藤波ー!ありがとうな!」
田口先生は私のほうを見て、大きく手を振りながら叫んだ。



