キミの空になりたい



桃高はバッターに対して、吹奏楽部の音楽に合わせて掛け声をかける。


だけど、涌井君はその声すら耳に入っていないかのように、あっさり1人目を三振にしてアウトをとった。


四葉台高校の応援席から歓声があがる。


もちろん、私もその1人だ。


メガホンを力いっぱい叩いて、飛び上がってしまった。


初めて野球の試合を見に来たというのに、こんなに熱くなれるなんて思ってもみなかった……。



喉の渇きや、降り注ぐ太陽の事など忘れてしまうくらい、試合にのめりこんでいく。


試合というより、涌井君の姿にくぎ付けになってしまうんだ……。





回は進み、5回表の桃高の攻撃。


スコアは、12-0で四葉台高校が大きくリード。


四葉台側は、スタメン全員安打を達成するほどの、攻撃力だった。