その声は、今まであった不安を一気に吹き飛ばしてしまうような、威勢のいい声だった。
「集合!」
審判の声で、両チームのメンバーがベースの前に駆け出す。
一列に並んで、同時に頭を下げ、試合が開始された。
一回表の攻撃は桃高側。
守備につく四葉台ナイン。
マウンドには涌井君の姿があった。
背番号1番。
投球する姿は、何度か見て来たものと変わりがない。
ただ、いつもより気迫がこもっているように見えた。
プレイボールの声がかかり、涌井君は大きく振りかぶって第一球を投げた。
第一球は、バッターが空振りをし、ストライクとなる。



