「汐音?」
「……へっ?」
フェンスをつかんで見つめていたら、くるみに声をかけられた。
名前を呼ばれるまで、くるみがグラウンドの出入り口にいた事に気が付かなかった。
「珍しいね、汐音がここに来るなんて。見学者なんて珍しいから、誰かなーってベンチから見てたんだけど、汐音だったからびっくりしたよー」
「え?あ、うん。ちょっと、くるみの仕事ぶりを見てみようって思ってさー」
私はアハハと笑いながら、必死でごまかす。
用事があってここに来たというのに、まさか涌井君に見とれていたとか、恥ずかしくて言えない。
声をかけられるまで気づかなかったとか、どれだけ食い入るように見ていたんだろう?
嫌だなぁ、肉食系のような顔をしていたら……。



