何とかごまかす事ができたみたい。
私はホッとしながら、黒板の方を向き、黒板消しを元の場所に戻す。
「……カン違いみたいだから、よかった。翔平の事を好きになっても、無理だと思うから、好きにならないほうがいいって、言いたかっただけなんだ」
「……え?」
上原君がこちらを振り返っているのかはわからない。
私は彼に背を向けた状態だから。
もちろん、彼には私の今の表情が見えていないはず。
「じゃ、練習に行くよ」
「……ばいばい」
私の最後の言葉が彼に届いていたかはわからない。
上原君の足音が教室から出て、遠ざかっていくのが見なくてもわかった。



