「まだ現物もらってないけど、その前にお礼を言っておこうと思って。ありがとう」
「あ、いや、私は……そんな事は……」
バレバレだけど、さすがに認めるわけにもいかない。
どう答えようか困って、私は下を向いた。
「悪い悪い。試合当日まで他の部員に言わないし、くるみやマネージャー達にもバレてるなんて言わないから。だから、藤波さんも、俺が知ってる事言わないでくれな?」
「……うん」
私は小さく返事をする。
他の人には言わないでいてくれるのなら助かるけど……。
「んじゃ、俺行くよ。翔平待たせてるし」
「あ、そっか……」
涌井君の名前にドキッとして、私は黒板消しを思わず落としてしまった。



