だからコウタなどいらなかったのだ。
コウタは学校でいじめられたけれど、自宅に帰っても母は優しくなどしてくれないのだ。



母「コウタお前が生まれてきたから私の計画が狂った。お前など死んでしまえばいい。」

何一つ悪いことなどしていない。
学校で差別を受けること、誰も助けてはくれないから母の愛情がただほしい。
それだけであった。
それだけなのに、母は毎晩コウタを殺そうとした。

畳の上に毎日コウタを正座させる。
広い畳の端には木刀や刀が、飾ってあった。

そして二時間に渡り、修行だなどと理由をつけ頬をはつる。
母は左右から往復するたびにコウタの頬をはつる。
コウタが一度、動いたり、泣きわめいたりしようとすれば、息のねが止まる寸前までプールに沈める。

母「あんたなんか消えればいいのに」

そんな虐待はコウタの母が父から捨てられるまで続けられた。

父はそんな事実を知らずに、別の女を孕ませ自宅に住まわせた。

母「ちょっと誰よその女は」

父「心の繋がりを裏切った裏切り者だなお前は。」

そして父は数日後、虐待の事実をしってしまう。
事実を知った父は母を殺してしまう。
それから新しい母と弟ができた。

コウタは長男ということで、そのヤクザを継ぐことになる。コウタの一番の理解者は弟だった。複雑な家庭で育ったために話が解るのは弟だけであった。辛いことや、苦しいことを言えるのは他人であり、兄弟である弟しかいなかった。しかし、コウタが歳をとったある日弟は自殺してしまう。取り残されたコウタは涙を誰にも見せることなく泣いた。そしてまた、ヤクザとしての生き方を貫く毎日を送るしかなかったのだ。だから、利用できるものは利用する。そんな生き方を覚えるようになったのだ。