「理緒?」
「ごめん、別れよう! あたしたち」
「はっ?」
「なんか、ケンジとは価値観が違う。あたしはケンジのお兄さんみたいに、ラーメンの残ったスープを雑炊にして食べるような女なんだよ」
「え、ちょっ、」
「とにかく、ごめん!」
突然の別れに唖然とするのはケンジだけじゃなくて、あたしも同じだった。
自分が何をしようとしているのか理解できなくて。
まだ何も入っていない空っぽの買い物カゴをケンジから奪うと、あたしは野菜コーナーへと猛ダッシュした。
キャベツ、もやし、にんじん、白菜、ニラ、ネギ。
目に付いた野菜を手当たり次第カゴに投げ入れると、今度はレジへと走った。
あの男はすでにレジで清算を終えて、買った物を袋に詰めていた。
早く…早く…と、焦るあたしの姿を前に、レジの男の子は黙々と素早く清算を終えた。
袋に野菜を押し込みながら、男を目で追う。
初めて会った時と同じスーツ姿の男は出口に差し掛かっていた。


