「ケンジの兄で、菅原浩平といいます」
「……氷室理緒です」
やっとの思いで自分の名を名乗る。
何度も顔を合わせているのに、初めて知る男の名前。
菅原浩平……。
あたしは男の名前を心の中で何度も呟いた。
「じゃ、俺、今日は理緒と一緒に飯食うから」
「あぁ、邪魔して悪かったな」
急かすように、ケンジはあたしを男から引き離す。
男も手を振って、あたしたちに背を向けた。
男のカゴの中には、元値に戻った『幸せはこぶ味噌らーめん』が入っていた。
ラーメンに寄り添うようにして、卵と七味唐辛子の瓶と子牛印のバターも入っている。
野菜くらい入れろって言ったのに。
憎まれ口ばかり叩くあたしの忠告なんて、やっぱり無視なんだね。


