【恋愛短編】味噌らーめん



「………」



なぜか、あたしが最初に手にしたのは目的の子牛印のバターじゃなくて。

小さな瓶に入った七味唐辛子だった。



「おいしくなかったら、あの男から2日目の雑炊を語る資格を剥奪しなきゃ」



低い声で呟きながらあたしは目的の子牛印のバターを手に入れる。

お目当ての物が手に入って、狂喜乱舞のはずなのに。

あたしの頭の中は、七味入りの2日目の雑炊がぐるぐる回っていた。



お目当ての子牛印のバターと、買う予定のなかった七味唐辛子。

アパートに戻ったあたしは、スーパーの袋を無造作に冷蔵庫に押し込み、帰宅時間に合わせて炊飯器のタイマーをセットすると大学に向かった。



「理緒ちゃん!」



2限目の講義が行われる講義棟に向かう途中で、不意に呼び止められる。

振り返ると、名前は知らないけれど、確か同じ学年でいくつか同じ講義を受けている男の子がいた。