幾筋もの煙が、空へと昇っている。 空は、煙が凝ったかのような灰白色の雲で覆われていた。 医術所はどの辺りだろう。 礼(らい)は眼下に広がる皇城の建物群を見つめ始めて、やめた。 医官長になってやる、と笑っていた旧友は、いまや皇城を落とそうとする逆賊だ。 逆賊――民から見れば、愚帝から自分たちを守ってくれる義賊。 自分と彼女はもう、完全に敵対する立場にある。 「起きていたのか」 背後の寝台から声がかかる。 動乱の渦中にあるとは思えないような、落ち着いた声。 「は――主上(しゅじょう)」