翌日から七杜自ら、いちこに護身術を教え始めた。


「力を力で押し返そうとするな!
相手の力を利用していくんだ。」


「はいっ!」


1時間稽古して10分休憩を2回くりかえした。

すると、高千が事務所へ飛び込んできて叫んだ。


「陀多山を抜ける道路が土石流で使い物にならなくなったって。
だから、みんな回り道して陀多西林道を使いだしたらしいんだが・・・。」


「どうした?続きを言ってみろ。」


七杜は表情を曇らせながら高千を促した。


「西林道にはいろいろ出るらしいんだ。」


「いろいろ・・・とは?」


「人の霊とか、山賊とか狼とか・・・それでさ、それだけなら俺たち退治屋の仕事で楽勝なんだけど、俺・・・すげえ金持ちに仕事を依頼されちまってさ。」


「すごい金持ち?もしかして・・・その話は稲美屋さんの黄金の女神像を潮花町のはずれにある教会へ持ち込むってやつか?」


「なんで知ってるんだ?情報はええな。
その女神像を俺に運んでほしいって言われたんだ。

けどさ、その女神像って1時間ごとに魔物を引き付けるらしくて、回り道の分でざっと計算すると、魔物が4匹は出てくる計算だ。

俺は申し訳ないが、魔系退治は苦手だ。
走ることには自信があるけど、4匹なんていけるか?」


「ふむ・・・聖智や静歌は西林道を食い止める要員になってしまうだろうし、獣は蒜名か・・・その他で4体の魔物か。」


「あの・・・それなら、リズナータならいけるんじゃないかしら。」


「えっ!」


「リズナータなら魔物も人間も獣も戦えるわ。」


「それはそうだが・・・その間君はどうするんだ?
高千の足の速さはかなりの速さだが、リズナータが君を連れて走ってなおかつ、敵も倒せるというのかい?」


「あ・・・・・そっか。私は足でまといですね。」


「リズナータが君から離れてゴールで君とおちあうなら何とかなるとは思うけど・・・そんなことができるのか?どうか。」


「私、彼にきいてみます。
リズならきっとお願いすれば・・・きいてくれそうな気がするんです。」


「ならいいが・・・とにかく早めに頼む。
高千は明日の暗いうちに稲美屋さんを出発する予定なんだ。
今夜までに返事がほしい。」


「わかりました。では、すみませんがお部屋にいったん帰らせてもらっていいですか?
ここだと、意地を張っちゃうかもしれませんので。」


「ああ、頼むよ。」


寮の部屋にもどったいちこは、胸に手を当て「リズ、愛しています。」と唱えた。


ボワーーーーーン!


「嫌なこった!」


「話をきいてたのね。どうしてなの?」


「当たり前だろ。魔物を倒すって俺は魔族だぞ。
仲間殺しを進んですると思うか?」


「そういえばそうね。」


「そうねじゃない!だったら断れ。」


「断れるなら困ってないわ。
女神様の像を待ちわびている人たちの希望が台無しになっちゃうのよ。

そりゃ、あなたは魔王の弟でしょうけど、私の中に居候している限り、自由じゃないはずよ。」


「俺を脅すのか?」


「ええ、魔物を殺すのが嫌なら、せめて交渉して襲って来ないようにしてくれればいいのよ。」


「それはできない。交渉して和気藹々なんて魔族はしない。
イエスかノーかで食い殺すだけだ。
接触したら、殺すのが礼儀みたいなもんだからな、4体はぶっ殺すしかないな。

な、なんだ、その目は!!!」


「だって、だってリズってかっこいいんだもん。
魔物4体程度なんて楽勝だよね。

私の代わりに任務をしっかりやってくれたら、私・・・ご褒美あげるわ。
何がしてほしい?」


「そうだな・・・おまえができそうなことでといえば・・・。
もどった俺とキスしてくれるか?」


「えっ!?な、なんて言ったの?」


「都合よく、ボケるな!俺とキスしろって言ったんだ。
それ以外の条件は一切却下だ。
あ、もちろんキスは唇どうしだからなっ。」


「あ・・・」


「なんだったら、今1回試してみてもいいぜ。」


「どうしてよ。どうして・・・私にそんなこと言うの?
魔界の偉い人なら女性なんてよりどりみどりでしょうに。

どうして私なんかにそんな注文をつけてくるの?」


「契約・・・。おまえとは契約の仲だ。
それに、けっこうおまえを気に入っているからな。
さあ、どうする?

俺に退治屋の仕事をさせたいならば、俺にも報酬がいただきたいからな。」


「わかったわ。するわ、報酬はきちんと払うから。」


「そうか、じゃ、高千のガードは任せろ。」


「ありがと。高千に知らせてくるわ、もどって。」


「おい!もう帰れか?・・・せっかくおまえと・・・」