インタビュアーが祐希が作った赤い本の形のオルゴールを開けると、優しい音色が響き渡った。


テレビを見ていたいちこは、確かに懐かしい気持ちになって涙があふれてきた。


「祐希さんったら・・・もう・・・すごいです。
ありがとう。」


そうつぶやくいちこに、車のドアを開けながら、涙を流している七杜が近づいた。


「いちこ・・・。俺は、いちこと逢いたかった。」


「えっ?な。な・・・なな・・・七杜さん?」


「俺はもう七杜として、君に触れることはできないんだと思ってた。

でも・・・俺の意識が君の手を離さなかったおかげで・・・ここまでやってくることができた。

退治屋で俺の体が滅んでも、後戻りはできない覚悟はできていたはずなのに・・・。


ずっと空虚な世界で後悔してた。

いちこに会えないまま消えるのが嫌だったけど、でも、いちこが時空の狭間に閉じ込められるのはもっとつらかったから・・・嫌だったから・・・俺は赤い本を・・・。


だけど、こうやってめぐり逢うことができて、触れることもできるなんて・・・俺はほんとに・・・うれしい。

いちこ・・・俺を導いてくれてありがとう。

それと、他のヤツらを導いてくれてありがとう。代わりに礼をいうよ。」


「私は何もしてないですよ。
私ね、今テレビに出てる祐希さん以外の退治屋のみんなも見かけたんです。

私のことを見ても気がつかなかったみたいでしたけど、元気にこっちで暮らしていてくれてうれしかった。

なのに七杜さんだけがまだ会えなくて、すごく心配で・・・すごく逢いたくて。」



「いちこ・・・ありがとう。
俺に逢いたいと思ってくれていたんだな。

うれしいよ。それと祐希に礼を言わないとな。
俺の記憶をもどしてくれた。

あいつ・・・あいかわらずだな。
いや、前よりも気がきくようになったな。
俺たちのためにオルゴールだって。」


「えっ?オルゴールがどうかしたんですか?」


「あれは俺の記憶のオルゴールだ。
いちこと俺を結ぶ記憶がいっぱいぶつかってきたよ。

いちこ・・・こっちの世界だと言い方がおかしいかもしれないが・・・。
俺と結婚してくれないか。

あ、すぐってわけじゃなくて・・・大学行きながらでもいいし、卒業してからでも・・・いや、やっぱりだめだ。待てない!
大学の男どもがわらわら付きまとってくるかもしれないし。

だめかな?」


「だめだなんて・・・そんなことない。」


「いちこ・・・これから接吻仕掛けるから、嫌なら拒め。」


「な、七杜さん!!そんなぁ。
そんな・・・こと・・・リズと同じようなこと・・・。

好き。」


「いちこ、もう俺のものだ・・・いいな。」


「はい。」


2人が愛を確かめ合っていると・・・テレビから祐希の声が続いて聞こえてきた。



「青い本のオルゴールの音で、今、すてきな恋人たちが幸せになります。

そして、仲間たちはみんな恋人たちを祝福しているんです。

なぁ、みんなの応援してる声が聞こえるか?

幸せになれよ・・・・・異世界から花束を贈る代わりの言葉としよう。

俺たちみんな、おまえを忘れちゃいねえんだよっ!おい、きいちゃいね~よな。ワハハ」




それが旅の終わり・・・。


おしまい。