妖刀は弾かれて地面に転がり、不気味な黒いオーラに包まれた。

「ふははははは。いい腕だ。
おまえなら、日緒名を殺せそうだな。

おまえの血をいただくぞ。
そして念願の日緒名の命をこの手でつぶしてやるのだ。」


「ほぅ・・・刀のくせに俺の腕を見切ったというのか?
なら、わからないのか?

俺の型が日緒名と同じだということが・・・。」


「おまえはまさか・・・」


「ああ、俺は日緒名の弟子だ。」


「嘘だ!日緒名は弟子など持たない。
だから私は・・・。」


(ま、まさかこの刀の主さんって、日緒名さんのお弟子さんになりたかったのかも・・・。)


「そうか、おまえ弟子になりたかったのだな。
ああ、日緒名・・・俺の師匠は弟子はとらなかった。」


「では、おまえは・・・どうして日緒名と同じ使い手なのだ!」


「俺は日緒名の息子・・・みたいなものだから。」


「なんだとぉ!息子だぁ?ウソだ。あいつは結婚などしていない。」


「ああ、若いときに愛する女を自分のせいで死なせてしまってからずっとひとりだった。

おまえのような逆恨み野郎に弱点になってしまった女性は狙われたんだ。

そして師匠はずっとひとりだった。

でもな、彼は寺や神社の関連施設で保護されていた子どもたちに手習いを教えていた。
子どもが大好きだったのさ。

自分の意思とは関係なく、血生臭い日々を送ってしまう彼にとって本当の肉親を持つのは怖かったが、何のつながりもない子どもたちには分け隔てなく愛情を注げたし、逆に勇気ももらえるのがうれしいと言っていた。

そして、どうしても離れようとしない俺だけにこっそり剣術を教えてくれたのさ。

けど、教えてくれたのは基本だけだった。
あとは俺の武者修行の旅で俺はこんなヤツになっただけだ。」


「そうか。ではおまえの血を目いっぱい吸いこんで、日緒名への土産話にしてやろう。」


「その様子じゃ、日緒名が死んだと言っても信用しないのだろうな。」


「日緒名が死ぬわけなかろうが・・・!」


「わからずやな刀め。はぁーーーーー!」


妖刀と蒜名の刀がぶつかりあい火花が散った。


「ねぇ、リズ。何とかならないの?
妖刀は疲れ知らずだわ。このまま長期戦になったら、蒜名さんが不利になっちゃう!」


「そんなこといってもあのスピードとバシバシ振り下ろされる双方の剣をどうやって止めろっていうんだよ。

俺の腕じゃリーチが足りねえのはわかるだろ?」


「そのために魔力があるんじゃないの?魔族なんだから。」


「しかし・・・妖刀だろ。どうやって止めればいいんだ・・・。

あ、そっか。その手があったな・・・。

蒜名、刀を上空へ弾き飛ばせるか?」


「何をする気だ。生半可なへっぽこ魔法じゃ、こっちが命取りだ!」


「誰がへっぽこだぁ!
とにかくおまえは打ち上げればいいんだ。
そしたら俺があいつが2度と斬れないようにしてやる。」


「わかった、やってみよう。」


蒜名はそれから右へ左へと動きをそらしながら、妖刀の隙を狙っていた。
そして、ついに上空へ弾き飛ばすことに成功した。


「今だっ!」


「おお、任せろ。気高き炎よ、忌々しき妖怪を焼き尽くせ。
大炎上幕!」


上空で妖刀は大きな炎の風呂敷に包まれ、まるで魚のホイル焼きのような状態のまま燃え続けた。


そして10分ほど燃えたのち、地面にはポタポタと金属液が落ち始め、上空には黒煙がたちのぼっていった。


「よし、いける。」


そうリズといちこが手をパチンとたたいた瞬間、蒜名のうめき声があがった。


「うっ・・・くそ。こんなことでは俺はやられないぞ。」