いちこはピアスをこすってリズナータ元にもどした。


「悪魔と仲良しさんなんですね。」


「仲良し?ん~リズは口とかやることは乱暴だけど、とても優しい悪魔だと思うんです。

私が自分の身を守るための守り神です。」


「でも、彼は悪魔です。契約があるからそこに住んでいるのでしょう?」


「ええ、1年間彼を回復させてあげる代わりに私には幸運が与えられる・・・かも?です。」


「かも?って。」


「この世界に飛ばされたとき、読んでいた紫の本にはリズが復活をした後のことは書かれていなかったんです。

リズ本人が何か知ってるかもしれないんですけど、リズの悪魔の記憶がまだ曖昧で、もしかしたら、その部分に元の世界へもどれる手がかりがあるんじゃないかって思うだけなんですけど・・・。」


「そうだったんですか。
本の存在がもうないなら、私が解読したくともできませんね。

しかし、あの大きな男がこんな小さなピアスの中に住んでいるとは・・・。

あれっ?!!!!これは。」



聖智がいちこのピアスに粘土のようなものをくっつけて引きはがした。


「粘土をピアスにくっつけてどうするんですか?」


「いえね、ピアスを触ったときにちょっと反応を感じたのです。
あ・・・やはり・・・。」


聖智が粘土に呪文のようなものを唱えると、粘土が広がって文字のようなものが並んでいるのが見えた。


「これが本の内容の続きですね。えっと・・・

『愛を重ね、改心と自己犠牲の心が幸福を生む。

愛情少なき時は、他色の書物が邪悪な源となりこの世の終わりを告げる。

すべては主と強者の運命。

強者が強者でなくなりし時、その命を主は飲み干せ。

それが旅の終わり。』

なんとなくわかるような、わからぬような・・・内容です。」


「主っていうのは私のことよね。
強者はリズのことだと思うわ。

だけど・・・命を飲み干すってどういうことなのかしら。
まさか、私がリズを殺すってこと・・・?」


「あなたにそのようなことはできません。」


「うん、だってもうリズは友達だもの。
だけど、聖智さんがピアスの解読してくれてよかった。

本が消えちゃって何もわからないままじゃないんだもん。
何かこれから起こったら、きっと言葉の意味がわかると思うわ。」


「いちこ、仕事が終わりましたからお寺の住職にご挨拶をします。
あなたもいっしょに来てください。」


「はい。」


高岳寺の住職はとても喜んで2人に茶菓子とお茶を出した。

「明日の朝から、崩れた墓石を修復できます。
あなた方のおかげで助かりました。ありがとう。」


「いえ、私も初めは力不足で危うく霊に飲みこまれそうだったんですけどね、彼女が力を増幅する札を届けてくれたので、なんとか戦えましたよ。

あと札は1枚残ってましてね・・・どうやらこれをご住職にプレゼントして差し上げねばならないようです。


はぁっーーーー!正体を見せろ。邪悪の塊めっ!」


住職のおでこに札がくっついた途端、住職は苦痛の声を発し、黒い化け物へと変化していった。


「なんと!・・・こいつは霊であって実態がある。
いちこ、下がっていなさい。」


「は、はい。」


「光羽の舞、はぁっーーー!」


黒い化け物は聖智の術を薙ぎ払うようにして、いちこにとびかかってきた。


「危ないっ!いっ・・・うう。」


「聖智さん!!そんな・・・背中から血が・・・。
お願い、リズ愛してるからもう一度出てきて!」


ボンッ!!!


「休めっていったり出ろっていったりわがままだなぁ。」


「文句はあとできくから、助けて!
住職様があんなのになっちゃったの。」


「おぉ、こいつは霊じゃないな。
俺と同じにおいがする。

霊たちの稼ぎをピンはねしてた、つまんない魔族だな。」


「い、いけるか・・・リズ?」


「おう、簡単だ。
へえ、冷静な術師様も形無しな状況じゃねえか。

いちこ、よく見てろよ。
おまえを守れるのは俺様だってことをな。

ふん!・・・はっ」


ズタズタズタ・・・・ドカーーーーン!

「どうよ・・・簡単なもんだぜ。
いちこ?

いちこ・・・おい。」


「リズ、聖智さんを胡紗々先生のところまで連れていって。
お願い!」


「ちぇ、俺の活躍はあたりまえかよ。よっこらせっと。」