目をあけると、光がまぶしく感じられた。

そこはゴーストタウンのような、荒れ果てた町の残骸。

屋外なのに、輪になって自分を見ている男たちの存在に、いちこは思わず声をあげてしまう。


「きゃあああああ!!!やめて。襲わないでぇ!」


そう叫んだ途端、男たちの輪は1歩後退してしまったが、すぐに輪の中のひとりが声をかけてきた。



「おまえはどこから来た?この町のもんじゃないだろう?
それも、最初に通りかかったときには姿形もなかったここにどうして寝ころんでいるんだ?」


大太刀を背中に背負った渋めのイケメン・・・・・


低音の声で質問されて、いちこは目をぱちくりさせた。


「あの・・・役者さん?ですか。でも、ここは撮影所のセットなんですか?」



「何を寝ぼけてるんだ?ここはさびれた町だ。
もとは句南っていう名前の小さな町だったらしいけどな。」


「ここは中国なんですか?」


割って入るように、忍者風の男がいちこに小太刀を突きつけた。


「おぃ、うちの社長をからかったら殺す!」


「なっ!あ、や、やめてください。冗談でしょ、うそ・・・いやっ!」


いちこは本物の刃物を目の前にして、恐怖を感じると涙を流さずにはいられなかった。


ボワーーーーーン!!!


「何が殺すだ、やれるものならやってみろよ。
俺様を殺すなんていい度胸だな。

だがな、おまえが負けたらおまえの心臓を食わせてもらうからな。ふふっ」


いきなり、いちこの前に大きな背中が見え、少し不健康そうな肌色に長い爪を持った男が立っている。


すると、さっきの大太刀の男が仲間に声をかけた。


「こいつ、人間じゃないぞ。静歌、いけそうか?」


「攻撃を防ぐくらいならできそうですけど、この魔物は・・・魔物というレベルじゃありません。
この気の強さは・・・まさしく魔王並み。

悔しいですが、倒すのは不可能かと。」


「ほぉ・・・神官か。
なかなかいい分析だ。俺様の正体を理解しているとはな。

そう、俺様は魔王の弟だ。
わけあって本の中に封印されていたが、この女が本を開封してくれたからな。
久しぶりのけんかなんて腕がなるぜ。」


「ま、待ってください!けんかはダメ、ダメです。
あなたがたも武器をしまってください!」


悪魔さん、私はあなたの恩人なのでしょう?
だったら私の僕といってもいいんですよね。
もっと私に恩を感じてくれなきゃ、本に戻しちゃいますよ!」


「なんだと!それは困る。
わかった、恩を感じればいいんだろうが・・・。」



「くくっ、これはいい。
そうか、君は悪魔使いってとこだな。
私はこの道を進んで3つ目の町で退治屋を営んでいて、名前は七杜(ななと)という。

どうやら、君たちはこの世界とは別のところからやってきたように見える。
詳しいことをききながら、これからの君たちの生活のことについて話したいのだが、着いてきてくれないかい?」


「別の世界?日本って国がある世界じゃないんですか。」


「日本?そういう名前の国はないね。この世界じゃ、国は1つだけ。
つまり、宇名観(うなみ)という世界に州がいくつもある。

じつは、君と同じようなことを言ってやってきた人間も俺は知っている。
とにかく、ここに来たら生活していかなければ生きていけないだろう?」


「は、はい・・・。あの、私と同じようなことを言う人ってその退治屋さんにおられるんですか?」


「ああ、退治屋のメンバーだ。そしてよかったら君もこれからメンバーになってほしいんだがね。」


「ええっ!でも・・・この人と私は・・・。」