*

さやかは報告に来たグレースを見もせずに言った。

「よかったわ。
 大筋で順調で
 登場人物が予想外に増えたけど」 

「はい」

「子供は順調そう?」

「はい」

「では、計画を引き続き進めて。
 あなたが秘書に戻る準備も忘れないように」 


やっと顔を向けて、グレースに婉然と笑いかけた。

笑いかけられたグレースは静かに一礼をして出て行った。

デスクの上に飾られている家族写真に視線をやる。

夫と自分と二人の息子。

胸の中で語りかける。

子が出来たら、あなたも少しは強くなるでしょう。

多くの母親がそうであるように。

長く、手放している積りは無いのよ。

あなたは私のもの。

このダバリードの繁栄のためにあるのだから。