「おまえ、育ててみないか」
全く予想外の言葉だった。
思わず振り返る。
「なんだって?」
涼は静かにじっと見ていた。
「生まれた子を育ててみないか?」
「ベビーシッターをするのか?」
涼は眉を少し不機嫌に寄せた。
「おまえなあ。
遺伝的に半分はお前の子なんだから、ベビーシッターでなくて母親だろ」
綺樹は驚きで口を開けてしまった。
「おれの方が、なんだって、こう同じ女に何度もプロポーズしなくちゃいけないかね」
憮然として羊羹を切って、口に入れた。
綺樹は呆然としてその様子を眺めていた。
「ちょっと考えさせてくれ」
やっとのことでそう言った。
涼は羊羹からちらりと綺樹に視線を投げた。
「どうぞ。
コーヒーは?」
綺樹は受け取って口をつけた。

