それだけじゃない。
綺樹は自分の中で繰り返した。
他に何があるというのだ。
内臓が冷えた感覚がする。
正直、涼とは真剣な話をしたくなかった。
今まで色々な事でキリキリしてきた。
もうそんな思いはしたくない。
もう、ごめんだ。
卵子提供の話もビジネスライクに、あっさりと終わらせたいのだ。
そうだ。
弁護士の立会いを求めればよかった。
指先が冷たくなり、震える。
「聞きたくないって言ったらどうする?」
涼は手を止めた。
綺樹は筋をとる手を止めず、顔を上げなかった。
「今、私たちの関係は穏やかだ。
このまま波風立てずに離れたらどうだろう」
「知人関係で?」
「そう、知人関係で」
涼はネギを持ったまま調理カウンターに寄りかかった。

