*

瞬に邪魔されず、綺樹を確実に捕まえられるのは大学の研究室だ。

不意打ちを狙って連絡をいれずに訪れた。

学習室で学生の卒論をチェックしているらしい。

涼はドアのところで綺樹の姿を見つけ、しばらく立ち止まっていた。

ダイヤモンドの鑑定は北の光でする。

ふとそんなことを思い出した。

白くて寒々しい光。

綺樹の横顔が余計に白く、透き通って見える。

集中している顔。

ゆっくりと近づいても気が付かない。


「熱心だな」


角の隣の席に腰を下ろすと、顔を上げて涼を見つめる。

ゆっくりと意志が戻ってきた。

驚いたようだった。


「どうしたんだ?」


この位の光でも綺樹の瞳が淡くなる。

それを見ながら涼は口元で笑いを作った。