「その状態に陥る事を、見抜けなかった自分を呪いたくなるよ。
 いや、分かっていたけど、自分の保身に走った」

「あなた本当に欲求不満でしたものね」


涼はちらりと成介を見て軽く笑った。


「綺樹はダバリードの仕事が好きだからな。
 あれを完全に取り上げていいのかの迷いもあった。
 だが瞬に走ったお陰で決断できたよ。
 どこかの秘書が殺人的なスケジュールを組んでくれたおかげで、なかなか実行できなかったけど。
 ただそんなに早くNYに戻るとなると」


ばさりと書類を重ねた。


「動かないとな。
 おまえが、いい悪智恵を授けてくれたしね」

「悪知恵とは心外ですね」


成介はため息混じりに言った。


「全く、悪魔みたいになりましたね。
 一人で気ままに旅しているときに魂でも売りましたか?」


涼は心底面白そうに成介を眺める。