成介に一本取った気になって愉快だった。
「愛しているとかではなくて、心地いいんだ。
だからそれに浸かっていたくなって、口走りたくなる。
でも状況を考えると、ありえないから大丈夫だよ」
「そこまであなたにさせようとする男と、一度会ってみたいものです」
「会ってるじゃないか」
綺樹は名前を告げた。
成介が再び言葉を失っていた。
確か大学のサークルの後輩だと、過去に聞いたような記憶がある。
綺樹は微笑して成介を見つめていた。
立っていた成介は向かい側に座った。
「社長は、泊り込んでいる相手が誰なのか知っているのですか?」
「うん。
なんせ瞬がわざわざ自分から電話をかけて暴露したからね」
これで携帯を壊すまで激怒した理由がわかった。
成介は観察するように綺樹を眺めた。

