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使っている部屋に戻ると成介が待っていた。
「どうでしょう?」
「ちゃんと帰るまでには仕上げるから、心配には及ばないよ」
その話じゃなかったのだが、成介は訂正せず、その方向の話をそのまま続ける。
「NYに戻る日は決まったのですか?」
「来月末に卒論発表会があってね。
それを見届けてから。
西園寺の仕事は今月一杯までには上げるよ」
「そんなに早くですか」
成介が驚いている。
「今の状況が苦しくて。
真綿で首を絞められている。
このままだと暮らしている男と、馬鹿なことをしてしまいそうなんだ」
「なんですか?」
単なる好奇心のようだ。
「結婚」
絶句している。

