The side of Paradise ”最後に奪う者”


   *

使っている部屋に戻ると成介が待っていた。


「どうでしょう?」

「ちゃんと帰るまでには仕上げるから、心配には及ばないよ」


その話じゃなかったのだが、成介は訂正せず、その方向の話をそのまま続ける。


「NYに戻る日は決まったのですか?」

「来月末に卒論発表会があってね。
 それを見届けてから。
 西園寺の仕事は今月一杯までには上げるよ」

「そんなに早くですか」


成介が驚いている。


「今の状況が苦しくて。
 真綿で首を絞められている。
 このままだと暮らしている男と、馬鹿なことをしてしまいそうなんだ」

「なんですか?」


単なる好奇心のようだ。


「結婚」


絶句している。