涼の表情が止まる。 綺樹は少し腕を上げて、早く行けと犬を追い払うように手を払った。 むっとした顔になるのに、綺樹が口の端で笑う。 ドアが閉まってエレベータが上に上がり始めた。 このぐらいの意地悪は許してもらわないとな。 綺樹は微笑した。 知人関係になっても、どこかで会ったら挨拶をして欲しいと言ったのは、あっちなんだから。 ゆっくりとエレベータのボタンを押す。 お互い、本当に気に障る相手だよな。 綺樹は隠すように、俯いたままずっと微笑していた。