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NYに戻る日は、大学の卒論発表会の後にした。
いい加減なところで帰るわけにはいかない。
西園寺の仕事もそうだ。
それまでに仕上げなくては。
綺樹は成介に資料の閲覧を頼み、西園寺の本社を訪ねた。
涼とわざわざ会うつもりはなかった。
向こうも無いだろう。
資料を分析しつつ、成介に了解を貰ってビルの中を歩き回る。
空気が読める。
どの部署がどういう雰囲気を持ち、上手く回っているのか。
首からIDをぶら下げているとは言え、目立つらしく、廊下を歩いていると時々不審そうな顔で見られた
り、振り返られたりする。
まあ、外人だしね。
少しひねくれた気持ちだった。

