相変わらず、さやかは多忙だったから、秘書に伝言をしておいた。
瞬が顔を向ける。
綺樹の携帯が鳴るのは初めてのことだ。
「さやか?
忙しいところ、ありがとう」
「久しぶりね。
あなたと話すのは」
さやかの表現に笑った。
「そうだね。
お蔭様で、良くなって。
だからNYに戻りたいと思っているんだ。
許してもらえる?」
さやかが可笑しそうに微笑しているのが、目に見えるようだった。
「そのようね。
涼から電話をもらったわ。
管理外になったので、これ以上は責任持てませんって」
血の気が引いて指先が冷たくなるのを感じた。
そうか。
もう知人関係に戻っていたのか。
道理で会わないはずだ。

