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上海での前の仕事が押しているらしい。
3時間ほど遅れると連絡があった。
そうなると夜の9時になる。
涼は春香に約束のキャンセルの電話をいれた。
全く。
忌々しかったが、権力的立場で言えば全く文句は言えなかった。
ホテルの会議室に涼と重役、双方の担当者がそろい、後はダバリードの上席副社長だけだった。
「とてもお忙しいようですね」
涼の言葉に向こうの担当者は苦笑いをし、侘びを言った。
「あの方は上席副社長の中でも特に多忙を極めておりまして、こちらもうかうかしていられません」
「それはそれで大変ですね」
笑いを交わしたところにドアが開いた。

