沈黙の中、成介が傾ける度に、グラスの中の氷が音をたてる。
どちらかというと心地のいい沈黙だった。
「あの男。
あなたに対して、少し成長しましたよ。
回復した後、半分は本気でアメリカに返す積りでいましたからね」
「半分?」
それは意外だ。
事あるごとにアメリカに戻すと言っていた。
「そうですよ。
あなたがダバリードで仕事をすることが、この上なく好きだと知っていますから。
かつてあなたが自分に願ってくれたように、あなたの幸せを願って。
この点については、相変わらず、あなたたちは空回りしていると思いますが、それはおいておきます。
そして、残りの半分は、繋ぎとめることを妄想していました」
そうだったのか。
だから瞬が暴露した時に、激昂したのか。
少し愉快な気持ちになって、綺樹は笑った。

