The side of Paradise ”最後に奪う者”


   *

次の日、綺樹は何も予定が無いようだったが、瞬には仕事があった。


「休みたいなあ」


朝食のコーヒーを飲みながら、瞬が朗らかにぼやいているのに、綺樹は微笑した。

育ちの良さだろうか。

本当に天真爛漫だ。


「早く帰って来るから待っててよ。
 あなた、ぴょいと、いなくなりそうだからね」


トーストを持った手で、蛙が跳ねるような真似をする。

綺樹は黙って微笑した。


「綺樹さん。
 お返事してください」

「うん。
 そうだね」

「なにが、そうだねですか」


瞬はトーストを持っていた手で、わざと綺樹の髪の毛をかき回した。

パンくずが髪にまみれ、いくつかは落ちて目に入ったらしく、綺樹はしばたかせた。


「こんなひどい仕打ちは始めてだ」


ぼやいて頭をふる。