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次の日、綺樹は何も予定が無いようだったが、瞬には仕事があった。
「休みたいなあ」
朝食のコーヒーを飲みながら、瞬が朗らかにぼやいているのに、綺樹は微笑した。
育ちの良さだろうか。
本当に天真爛漫だ。
「早く帰って来るから待っててよ。
あなた、ぴょいと、いなくなりそうだからね」
トーストを持った手で、蛙が跳ねるような真似をする。
綺樹は黙って微笑した。
「綺樹さん。
お返事してください」
「うん。
そうだね」
「なにが、そうだねですか」
瞬はトーストを持っていた手で、わざと綺樹の髪の毛をかき回した。
パンくずが髪にまみれ、いくつかは落ちて目に入ったらしく、綺樹はしばたかせた。
「こんなひどい仕打ちは始めてだ」
ぼやいて頭をふる。

