綺樹は窓の外を見た。
さやかがまともになるまで涼に預けたけれども、このまま日本にいるのは辛いばかりだ。
涼に望まれているとおり、知人関係にまで早く後退しなくては。
涼はちらりと綺樹の顔を盗み見た。
仕事だから当然、化粧をしていた。
薄い桜色のアイシャドーのせいか、可愛らしい色気があった。
くちびるにもほんのり艶がのせてあった。
無精で伸ばしっぱなしの癖のある栗色の髪を無造作に一つに結んでいて、後れ毛がうなじを飾っている。
涼は憂鬱になる。
全く駄目だ。
知らぬ内にため息をついていたらしく、綺樹が視線をよこした。
「なんでもない」
涼はそっけなく言った。
どうとったのか知らないが、綺樹は視線を自分の膝に伏せた。
「おまえのせいの、じゃないよ」
口調を和らげる。
「そうか」
綺樹は外へ真っ直ぐと視線をすえた。

