The side of Paradise ”最後に奪う者”


  *

瞬に電話することに、躊躇いがまったく無かったわけじゃない。

朝、いつもどおり迎えに来てくれた涼の車に乗り込むと、やはりいつもどおり調子を聞かれて、綺樹もいつ
もどおり、別にと答える。


「そうか?」


いつもより長く、綺樹の顔に視線を止めている。

久しく忘れていたが、他の男と寝てくると、涼は必ず見抜いた。

でも今回は寝たというわけじゃないし。

涼はなんとなく不審げな顔をしていたが、やがて車を発進させた。

運転している横顔を綺樹は一瞬見た。

涼の出す雰囲気。

瞬との後で、やっぱりこの男を本当に愛していると思う。

ギアを握っている手に視線を降ろした。

その指に自分と揃いの指輪がはまっていたこともあった。

でも今はあの女の指が絡まっている。